エッセイ NO.24『 うれしいお菓子 』(2026.1.12)      

                              楽々堂相談役(主人の女房)記

  2025年、年の瀬も終りに近づいたある日、長野の友人からうれしい荷物が届いた。例年、
 楽しみにしている手づくりの市田柿が入っている荷の中には、さまざまな美味・珍味と共に、
 初めて目にする菓子箱がひとつ。何でも最近オープンしたお店のものだとか。

  パンプキン、りんご、抹茶味の三種のパイたちと、梅味のお饅頭が、とても簡易な紙箱に
 沢山詰め込まれていた。

  まず私は、そのパッケージの軽さに・こだわりのなさに驚き(喜び)、次に、それぞれのお菓子
 たちとの対面では、作り手の心意気と素材に対する思いや工夫を見せつけられることになる。

               

  近年、お菓子屋さんの箱が、なぜかやたらに、こだわりや存在感を主張し過ぎていると感じて
 いた私は、このパッケージの手軽さと気取らなさ(恐らく材料代も多く取っていないだろう)から、
 物を大切にするという基本姿勢が見えて、我が意を得たりの思いを深くした。
 肝心のお菓子たちの紹介を写真と共に見ていただこう。

         

 〘桜の茶〙と名付けられたものは、たっぷり抹茶味のスポンジの下層には、ふっくらとした大納言
 小豆が甘すぎずに置かれ、表面には何とも可憐な姿と色の桜の蕾の塩漬けがちょんと配置され
 てパイ皮に守られるように美しい春を演出している。

 〘清流の里〙では、やはりパイ皮の中にりんご味のスポンジ、上には清流を流れるようにりんご
 のピールが乗せられている。さっぱりと控えめな甘さは涼風さえ届けてくれる。

 〘パンプキンパイ〙は、ご覧のようにやさしい色合いのかぼちゃあんが包み込まれたパイを楽し
 むことができる。大きさ・焼き加減、あんと生地のバランスも絶妙だ。

  驚きの極みが〘うめ〙と名付けられた丸いお饅頭。その姿から、梅のタネの存在を予想した私
 はゆっくりと口に運び、「絶対に梅のタネで歯を折らないように…」と細心の注意で口を動かし始
 めた。ところがタネが当たるどころか、やさしい甘さの白あんと梅の実のさっぱりとした塩味が
 広がるばかり。思わず口にし始めたものを手に取り直し、改めて内容を確認せざるを得なかった。
 感動!である。白あんの中には適当なサイズにカットされた甘塩漬けの梅の実が入れ込まれて
 いたのだ。そのやさしい仕事と作り手の技と思いは、私の心をしっかりとつかんだ。

  年の瀬の慌ただしいひと時にほっこりとやさしい甘さに出会えて、身も心も充電させてもらった
 私は、残る雑用も手際よく片づけた。そして、年内最後の便りとして、お菓子処に上記のような
 お礼状を書き送った。      (年末に書いた文章を、遅くなりましたがここに記し置きます。)
 
 《楽々堂主人より一言》
  当堂の筆も、品質や機能には細心の注意を払って作っておりますが、軸や箱を
  過度に立派にして高級品に見せたりというようなことは致しておりません。
  「外見より中身」「シンプル・イズ・ベスト」を旨とした筆作りをしています。
  

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